主任技術者の専任|4,500万円の線と兼務の条件
目次
主任技術者の専任は、「この工事は専任が要るのか」「ほかの現場と掛け持ちしてよいのか」を契約の前後で決めるときに必ず出てくる論点です。2024年12月と2025年2月に続けて制度が変わり、金額の線も兼務の扱いも、少し前の記事とは違う内容になっています。
この記事では、主任技術者の専任が要るかどうかを、建設業法26条と建設業法施行令の条文、国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルに沿って、現場の側から判定できる形に整理します。運用の細部は発注者ごとに上乗せの決まりがあるため、最後は許可行政庁(国土交通省の地方整備局や都道府県の建設業担当課)と発注者に確認してください。
主任技術者の専任とは?工事現場ごとに置く義務
主任技術者の専任とは、主任技術者がその工事現場の仕事だけを受け持ち、ほかの工事現場の主任技術者を兼ねないことを指します。根拠は建設業法26条3項で、公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、置かなければならない主任技術者または監理技術者は「工事現場ごとに、専任の者でなければならない」とされています。
先に押さえておきたいのは、主任技術者を置く義務と、専任で置く義務は別の話だということです。建設業法26条1項により、建設業者は請け負った建設工事を施工するときに、金額にかかわらず主任技術者を置かなければなりません。そのうえで、一定の工事だけ「専任」が上乗せされます。
| 根拠 | かかる工事 | |
|---|---|---|
| 主任技術者を置く | 建設業法26条1項 | 建設業者が施工するすべての工事 |
| 監理技術者を置く | 建設業法26条2項 | 元請の特定建設業者で、下請代金の総額が一定以上 |
| 専任で置く | 建設業法26条3項 | 公共性のある施設などで、請負代金が一定以上 |
専任と常駐は違う言葉
主任技術者の専任とよく混ざるのが、現場代理人の「常駐」です。専任は建設業法の言葉で、主任技術者や監理技術者にかかります。常駐は工事請負契約約款の言葉で、現場代理人にかかります。どちらも「その現場にいる」ように読めますが、根拠が違うので扱いも違います。現場代理人の側の整理は現場代理人届の記事にまとめています。
主任技術者の専任が要る金額|4,500万円と9,000万円
主任技術者の専任が要る金額は、建設業法施行令27条1項で、工事1件の請負代金の額が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)とされています。この金額は2025年2月1日に引き上げられたもので、それまでは4,000万円(建築一式工事は8,000万円)でした。
同じ日に、ほかの金額の線もあわせて動いています。古い数字を覚えていると判定を間違えるので、並べて確かめておきます。
| 何の線か | 改正前 | 2025年2月1日から | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 専任が要る請負代金 | 4,000万円(建築一式8,000万円) | 4,500万円(建築一式9,000万円) | 施行令27条 |
| 特定建設業の許可・監理技術者が要る下請代金の総額 | 4,500万円(建築一式7,000万円) | 5,000万円(建築一式8,000万円) | 施行令2条 |
| 施工体制台帳の作成が要る下請代金の総額 | 4,500万円(建築一式7,000万円) | 5,000万円(建築一式8,000万円) | 施行令7条の4 |
| 特定専門工事の下請代金の上限 | 4,000万円 | 4,500万円 | 施行令31条 |
栃木県の建設業許可の案内では、この4つを「令和7年2月1日から」の見直しとしてまとめています。専任の線(4,500万円)と、監理技術者の線(5,000万円)は別の数字です。前者は1件の請負代金、後者は下請代金の総額で測るので、比べる金額そのものも違います。
「以上」と「未満」の向き
施行令27条は「4,500万円以上」なので、ちょうど4,500万円の工事は専任が要ります。後で出てくる専任特例の上限は「1億円未満」なので、ちょうど1億円の工事は特例が使えません。線の上にちょうど乗る金額で迷ったら、条文の「以上」「未満」をそのまま読みます。
主任技術者の専任が要る工事の種類
主任技術者の専任は、金額だけでは決まりません。施行令27条1項は、次のどれかに当たる工事で、かつ金額の線を超えるものを対象にしています。
- 国または地方公共団体が注文者である施設または工作物に関する建設工事
- 鉄道、道路、橋、河川に関する工作物、上下水道、電気事業用施設、ガス事業用施設などに関する建設工事(施行令15条1号・3号を引いている)
- 学校、図書館、病院、社会福祉事業の施設、事務所、ホテル、共同住宅、工場、倉庫など、施行令27条1項3号に列挙された施設に関する建設工事
3号の一覧はかなり広く、民間の事務所ビルや工場、倉庫、共同住宅も入っています。一方で、個人の住宅(戸建て)は一覧に入っていません。戸建て住宅の新築は、請負代金が9,000万円を超えても、この条文の上では専任の対象になりません。共同住宅は入っているので、同じ住宅でもアパートやマンションは対象になる、という分かれ方です。
下請でも専任は要る
主任技術者の専任は、元請だけの話ではありません。建設業法26条3項は「建設業者」が置く主任技術者または監理技術者にかかるので、下請として請け負った工事でも、施設の種類と請負代金の額の条件に当たれば専任が要ります。下請の場合に比べる金額は、その下請契約の請負代金の額です。
主任技術者の専任が要る期間|契約工期のうち外せる期間
主任技術者を専任で置く期間は、契約工期が基本です。ただし、国土交通省近畿地方整備局が監理技術者制度運用マニュアルの内容として示している資料では、契約工期中であっても次の期間は専任を要しないとされています。
- 請負契約の締結後、現場施工に着手するまでの期間(現場事務所の設置、資機材の搬入、仮設工事などが始まるまで)
- 工事用地の確保が済んでいない、自然災害が起きた、埋蔵文化財の調査があるなどで、工事を全面的に一時中止している期間
- 工事完成後、検査が終わり、事務手続や後片付けだけが残っている期間
- 橋梁・ポンプ・ゲート・エレベーターなど工場製作を含む工事で、工場製作だけが行われている期間
- 下請工事では、下請工事が実際に施工されている期間だけが専任の必要な期間
ポイントは、これらの期間が発注者と建設業者の間で、設計図書や打合せ記録簿などの書面で明確になっていることが条件だという点です。口頭で「着工はまだ先だから」と済ませていると、外せる期間として扱えません。着工までの期間に別の工事を担当させたいときは、工事打合せ簿などで期間を書面に残しておきます。
主任技術者の専任の兼務|密接な関係のある工事
主任技術者の専任には、条文で認められた兼務があります。施行令27条2項は、専任が要る工事のうち、密接な関係のある2以上の建設工事を、同一の建設業者が、同一の場所または近接した場所で施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの工事を管理できるとしています。
この兼務は主任技術者だけが対象で、条文の書きぶりは「専任の主任技術者」です。監理技術者には使えません。また、「同一の建設業者が施工する」ことが条件なので、別の会社が請け負った工事どうしでは使えません。
兼務を考える前に確かめること
密接な関係があるか、近接しているかの判断は、工事の内容と場所で個別に決まります。同じ敷地の中で工区を分けて発注された工事、隣り合う区間の道路工事などがよく話題になりますが、発注者ごとに運用の決まりがあるため、契約前に発注者に確かめるのが確実です。
主任技術者の専任を判定する順番
主任技術者の専任を判定するときは、次の順で確かめると、途中で前に戻らずに済みます。
- 施設の種類が施行令27条1項の各号に当たるか(当たらなければ専任は不要)
- 1件の請負代金が4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)か(未満なら専任は不要)
- 契約工期のうち、専任を外せる期間を書面で決めているか
- ほかの工事と兼ねたいなら、近接工事の兼務・専任特例1号・営業所技術者の兼務のどれを使うか
- 選んだ道の要件を、契約時と変更契約のたびに満たしているか
一般には、1と2だけで判定を終えてしまうことが多くあります。3から5まで同じ紙に書いておくと、人の割り振りを決める会議で、そのまま根拠として出せるのがこの順番の良いところです。施工体制台帳に記載する技術者の欄とも食い違いが出にくくなります。施工体制台帳の書き方もあわせて確認してください。
主任技術者の専任特例1号と2号
主任技術者の専任特例は、2024年12月13日施行の改正で、建設業法26条3項のただし書として整理されたものです。専任が要る工事であっても、条件を満たせば専任でなくてよい、という扱いになります。
専任特例1号:情報通信機器を使って2現場まで
専任特例1号は、主任技術者と監理技術者のどちらにも使える特例です。国土交通省の資料では、次の要件をすべて満たす必要があるとされています。
| 要件 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 請負金額 | 各工事が1億円未満(建築一式は2億円未満) | 施行令28条 |
| 兼任できる現場数 | 2現場まで | 施行令30条 |
| 現場間の距離 | 1日で巡回でき、移動時間がおおむね2時間以内(片道) | 施行規則17条の2 |
| 下請次数 | 3次まで | 施行規則17条の2 |
| 連絡員 | 各工事に置く(土木一式・建築一式は実務経験1年以上) | 施行規則17条の2 |
| 施工体制の確認 | 現場の入退場を遠隔で確認できる仕組み | 施行規則17条の2 |
| 人員配置の計画書 | 作成し、現場に備え置き、営業所で保存 | 施行規則17条の2 |
| 現場確認の機器 | 映像と音声を送受信できる機器と通信環境 | 施行規則17条の3 |
工事の途中で請負代金が1億円以上になったり、下請次数が3を超えたりした場合は、それ以降は専任特例を使えず、専任で配置しなければならないとされています。契約時に満たしていても、変更契約で外れることがあるので、増額の協議が出たときは特例の要件も一緒に見直します。
施工体制の確認は、建設キャリアアップシステムか、それと連携したシステムが望ましいとされていますが、遠隔で入退場が確認できる仕組みであればほかのシステムでもよいとされています。現場確認の機器は、一般的なスマートフォンやタブレット、ウェブ会議の仕組みでも差し支えないとされる一方、山間部などで確実なやりとりができない場合は要件に当たらないとされています。
専任特例2号:監理技術者補佐を置く
専任特例2号は、監理技術者だけが使える特例です。工事現場に監理技術者の職務を補佐する者(監理技術者補佐)を専任で置く場合に、監理技術者が2現場まで兼任できます。国土交通省の資料では、主任技術者は適用不可と明記されています。
同じ監理技術者が、専任特例1号の現場と専任特例2号の現場を兼務することはできないとされています。また、専任特例1号の現場と、もともと専任が要らない現場を兼務することはできますが、その場合も専任が要らない現場の側で1号の要件(金額を除く)を満たし、現場数の合計が2を超えないことが条件です。
配置技術者 専任判定シート(主任技術者・監理技術者)
主任技術者・監理技術者を専任で置く必要があるかを、施設の種類・請負代金・期間・兼務の特例の順に、上から「はい/いいえ」で確かめるシートです。2025年2月1日からの金額(4,500万円、建築一式9,000万円)に合わせています。
Excelを見る・ダウンロード主任技術者の専任の最近の動き|2024年12月と2025年2月
主任技術者の専任をめぐる改正は、2回に分けて施行されています。
| 施行日 | 中身 |
|---|---|
| 2024年12月13日 | 専任特例1号(情報通信機器を使って2現場まで)の新設。営業所技術者等が専任工事の主任技術者などを兼ねられる特例(建設業法26条の5)の新設。工事現場の標識の「専任の有無」欄の書き方の追加 |
| 2025年2月1日 | 専任が要る請負代金を4,500万円(建築一式9,000万円)に、特定建設業許可などの下請代金の線を5,000万円(建築一式8,000万円)に引き上げ |
営業所技術者が現場を兼ねる特例
2024年12月の改正で、営業所に専任で置かれる営業所技術者(主任技術者の要件を持つ人)が、専任が要る工事の主任技術者を兼ねられるようになりました。条件は、その営業所で契約した工事であること、請負代金が1億円未満(建築一式は2億円未満)、兼ねられる現場は1つ、営業所と現場の移動時間がおおむね2時間以内、下請次数3次まで、などです(建設業法26条の5、施行令33条・34条)。
人の少ない会社では、営業所の技術者が現場を持てないことが受注の壁になっていました。1現場に限って兼ねられる、という線を知っておくと、受注を判断するときの選択肢が増えます。
工事現場の標識も書き方が変わった
建設業法施行規則の様式で、工事現場に掲げる標識の「専任の有無」欄は、専任なら「専任」、専任特例1号なら「非専任(情報通信技術利用)」、2号なら「非専任(監理技術者を補佐する者を配置)」と書くこととされています。特例を使う現場では、標識の書き方まで変わる点に注意します。
まとめ
主任技術者の専任は、建設業法26条3項にもとづき、公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する工事で、1件の請負代金が4,500万円以上(建築一式9,000万円以上)のときに求められます。金額は2025年2月1日に引き上げられ、同じ日に監理技術者や施工体制台帳の線も5,000万円(建築一式8,000万円)に動いています。戸建ての個人住宅は対象の施設に入っていません。
専任の期間は契約工期が基本ですが、着工前や全面中止の期間などは書面で明確にすれば外せます。兼務は、密接な関係のある近接工事(主任技術者だけ)、専任特例1号(1億円未満で2現場まで)、専任特例2号(監理技術者補佐を置く監理技術者だけ)、営業所技術者の兼務(1現場)の4つの道があります。金額、施設、期間、特例の順に確かめると、判定を間違えにくくなります。
よくある質問
主任技術者の専任が要る金額は税込ですか
施行令27条は「工事一件の請負代金の額」と書いています。消費税を含めるかどうかはこの記事で原典を確認できていないため、許可行政庁の手引きや監理技術者制度運用マニュアルで確かめてください。
主任技術者の専任は4,000万円からではないのですか
4,000万円(建築一式8,000万円)は2025年1月31日までの線です。2025年2月1日からは4,500万円(建築一式9,000万円)以上が専任の対象になっています。
戸建て住宅の工事でも専任が要りますか
施行令27条1項が列挙する施設に、個人の戸建て住宅は入っていません。共同住宅、寄宿舎、下宿は入っています。公共の注文者の工事など他の号に当たる場合は別に確認してください。
主任技術者は何現場まで兼務できますか
専任が要らない工事なら、条文上の上限はありません。専任が要る工事では、密接な関係のある近接工事の兼務(施行令27条2項)か、専任特例1号の2現場までが道になります。専任特例2号は監理技術者だけが使えます。
専任の主任技術者は休暇を取れないのですか
この記事では運用マニュアルの該当部分の原文を確認できていないため、休暇や研修の扱いは許可行政庁の手引きで確認してください。専任を要しない期間(着工前、全面中止中など)は、書面で明確にすることが条件です。
専任特例を使うと何を用意しますか
連絡員の配置、入退場を遠隔で確認できる仕組み、人員の配置を示す計画書、映像と音声をやりとりできる機器です。計画書は現場に備え置き、営業所でも保存します。国土交通省のホームページに計画書の参考様式が掲載されています。
配置技術者 専任判定シート(主任技術者・監理技術者)
主任技術者・監理技術者を専任で置く必要があるかを、施設の種類・請負代金・期間・兼務の特例の順に、上から「はい/いいえ」で確かめるシートです。2025年2月1日からの金額(4,500万円、建築一式9,000万円)に合わせています。
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