スランプ試験の手順と許容差|外れたときの扱い
目次
スランプ試験は、生コン車が現場に着いたときに、コンクリートの軟らかさが注文どおりかを確かめる試験です。試験そのものは数分で終わりますが、許容差の読み方、何回測るか、外れたときに誰に何を伝えるかで迷う場面が多くあります。
この記事では、スランプ試験の手順と許容差を、国土交通省の土木工事共通仕様書(案)と品質管理基準に沿って整理し、外れたときの扱いと記録の残し方までまとめます。数値は発注者ごとの仕様書・特記仕様書で上書きされることがあるため、最後は工事の設計図書と監督職員に確認してください。
スランプ試験とは?受入れのときに軟らかさを測る試験
スランプ試験は、まだ固まっていないコンクリート(フレッシュコンクリート)を円すい台の型に詰め、型を引き上げたあとに中央がどれだけ下がったかを測る試験です。下がった量を「スランプ」と呼び、cm単位で表します。試験方法は JIS A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)に定められています。
一般には、生コン工場が出荷時に測る検査と、施工者が荷卸し地点で測る受入検査の2段があります。この記事で扱うのは後者で、施工者が「注文したとおりのコンクリートが届いたか」を確かめる側の試験です。
国土交通省の土木工事共通仕様書(案)は、レディーミクストコンクリートの品質を確かめる検査を JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)により行うことを受注者に求めています。また、生産者などに試験を代行させる場合は、受注者がその試験に臨場しなければならないとされています。工場の試験員が測ってくれる現場でも、立ち会って結果を自分で見ることが前提になっている、という点がポイントです。
スランプ試験で何が分かるか
スランプ試験で分かるのは、そのコンクリートが型枠のすみずみまで行き渡りやすいかどうかの目安です。スランプが小さすぎると締固めが追いつかず、充填不足の原因になります。大きすぎると、水が多いか、材料が分離しやすい配合になっているおそれがあります。
強度そのものは分かりません。強度は別に供試体を作って圧縮強度試験で確かめます。スランプ試験は「打込む前に、その場で分かる品質」を見るための試験だと考えると位置づけがはっきりします。
スランプとスランプフローの違い
スランプ試験と似た試験に、スランプフローがあります。どちらも同じ形のコーンを使いますが、スランプは「中央がどれだけ下がったか」を高さで測り、スランプフローは「どれだけ広がったか」を直径で測ります。広がりは、最も大きい方向とそれに直交する方向の2か所を読み取ります。
JIS A 5308 は品質の項目としてスランプとスランプフローを別々に立てています。流動性を高めたコンクリートや高流動コンクリートを注文した工事では、受入検査の項目がスランプフローに置き換わることがあるので、配合計画書でどちらを指定しているかを先に見ておきます。
スランプ試験の手順|JIS A 1101の流れ
スランプ試験の手順は、試料を採る、型に詰める、型を引き上げる、下がりを測る、の4段です。ここでは、建材試験センターが公開している採取試験の実技審査基準(JIS A 1101 などに基づくもの)に書かれている要点を並べます。JIS本文の細部は規格票で確認してください。
| 段 | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 準備 | 平板を水平に置き、平板とスランプコーンを湿った布でふく | 乾いたままだと水分を吸われる |
| 詰める | ほぼ等しい量の3層に分けて詰め、各層を突き棒で25回一様に突く | 2層目以降は前の層に届く深さまで。底は突かない |
| 引き上げる | 上面をならしてから、コーンを垂直に引き上げる | 30cmの高さまでを2〜3秒。回さない |
| 測る | 中央部の下がりを測る | 1mm単位で測り、0.5cm単位に丸めて記録 |
詰め始めてから引き上げが終わるまでを3分以内とすることも、同じ基準に書かれています。測る人が慣れていないと、詰める段で時間がかかって3分を超えがちです。
試料の採り方も決まっている
スランプ試験に使う試料の採り方は JIS A 1115(フレッシュコンクリートの試料採取方法)によります。2024年3月に改正された JIS A 5308 では、トラックアジテータから採るときは、ドラムを回転させて均質にしたあと、シュートから出したコンクリートを20〜50Lほど取り除いてから採る形に見直されたと、山口県生コンクリート工業組合の改正解説で説明されています(改正前は50〜100L)。
形が崩れたら測り直す
引き上げたあとのコンクリートが片側に崩れたり、大きく傾いたりした場合は、その結果を採らずに測り直します。前述の実技審査基準では、上面の高低差が3cm以上、または広がりの中心とコーンの中心のずれが5cm以上を、再試験の判断の目安として挙げています。
スランプ試験の許容差|指定したスランプごとの範囲
スランプ試験の許容差は、注文したスランプの値によって変わります。国土交通省関東地方整備局の品質管理基準及び規格値では、次のように示されています。
| 指定したスランプ | 許容差 | 合格の範囲(例) |
|---|---|---|
| 2.5cm | ±1.0cm | 1.5〜3.5cm |
| 5cm以上8cm未満 | ±1.5cm | 5cmなら3.5〜6.5cm |
| 8cm以上18cm以下 | ±2.5cm | 12cmなら9.5〜14.5cm |
いま一般的な土木構造物は、スランプ12cmを標準とする流れになっているので、現場でいちばん見るのは「12cm±2.5cm」、つまり9.5cm以上14.5cm以下です。
ポイントは、許容差は「指定した値」を中心に取るということです。配合計画書に書かれたスランプが12cmなら、測った値が14.5cmでも合格、15cmなら外れです。記録表には測った値だけでなく、指定値と許容差の範囲を先に書いておくと、その場で判定を間違えにくくなります。
スランプ試験の許容差と「荷卸し地点」
許容差は、荷卸し地点で測った値に対して見るものです。ポンプで圧送したあとの筒先では、スランプが変わることがあります。どこで測る約束になっているかは、配合計画書と施工計画書で先にそろえておきます。
スランプ試験の頻度|荷卸し時に何回測るか
スランプ試験の頻度は、品質管理基準で次のように定められています。
- 荷卸し時に、1回/日以上、または構造物の重要度と工事の規模に応じて20〜150立方メートルごとに1回
- 荷卸し時に品質の変化が認められたとき
- 道路橋の鉄筋コンクリート床版にレディーミクストコンクリートを使う場合は、原則として全運搬車で測る(結果が安定していれば、監督職員と協議して減らせる)
小規模な工種で、1工種あたりの総使用量が50立方メートル未満なら、1工種1回以上の試験、または生コン工場の品質証明書等だけでもよいとされています。50立方メートル以上なら50立方メートルごとに1回です。ここでいう小規模工種には、橋台・橋脚・杭・擁壁(高さ1m以上)・函渠などは含まれません。
「品質の変化が認められたとき」は、回数の数え方に入っていない追加の試験です。シュートから出てくるコンクリートの様子が前の車と違う、と感じたら、予定の回数とは別に測ります。予定の回数を消化したかどうかより、目で見て変だと思ったら測るほうが、あとで説明がつきます。
スランプ試験と一緒に見る空気量・温度・塩化物量
スランプ試験は単独では行わず、同じ試料で空気量や温度も一緒に測るのが一般的です。受入検査で並べて記録する4項目を、根拠と一緒にまとめます。
| 項目 | 基準の例 | 出どころ |
|---|---|---|
| スランプ | 指定値に対して上の表の許容差 | 品質管理基準(JIS A 1101) |
| 空気量 | 指定値に対して±1.5% | 品質管理基準(JIS A 1116・1118・1128) |
| 塩化物量 | 原則0.3kg/m3以下 | 品質管理基準(コンクリートの耐久性向上) |
| コンクリート温度 | 暑中は打設時35℃以下(条件つきで38℃)、寒中は5〜20℃ | 土木工事共通仕様書(案)令和8年3月 |
塩化物量は午前の結果で午後を省けることがある
塩化物量の試験は、打設が午前と午後にまたがる場合、午前に1回打設前に行い、その結果が規制値の2分の1以下なら午後の試験を省略できるとされています。1回の試験で3回測定し、その平均で判定します。
温度と時間の決まりも同じ表に書く
土木工事共通仕様書(案)は、練混ぜから打ち終わるまでの時間を、日平均気温が25℃を超える場合は1.5時間、25℃以下の場合は2時間以内とし、運搬時間(練混ぜ開始から荷卸し地点に着くまで)は1.5時間以内としています。打込みは日平均気温が4℃を超え25℃以下と予想されるときに行い、この範囲から外れるときは暑中コンクリート・寒中コンクリートの規定によるとされています。
納入書に書かれた出荷時刻と、受入れた時刻、打ち終わった時刻を記録表に並べておくと、時間の決まりを守れたかがあとから確かめられます。
受入検査の記録表に置く欄
スランプ試験の記録表は、測った値を書く欄だけだと、あとで見返したときに判定の根拠が分かりません。次の欄をそろえておくと、1枚で説明がつきます。
- 工事名・打設日・打設箇所(どの部材に打ったか)
- 配合計画書の呼び方と、指定したスランプ・空気量、それぞれの許容差の範囲
- 時刻・運搬車の番号・納入書の番号
- スランプ・空気量・コンクリート温度・塩化物量の測定値
- 判定と、外れたときの措置(誰に連絡し、どう決めたか)
- 試験者と、立ち会った人の名前
供試体を採った回は、その旨も同じ行に書きます。材料検収の記録と同じく、「測った」ではなく「何と比べて合格にしたか」まで残すのが、記録表を作るときのポイントです。
コンクリート受入検査記録表(スランプ・空気量・塩化物量ほか)
荷卸し地点で行うスランプ試験と、空気量・コンクリート温度・塩化物量の測定を、運搬車ごとに1行で残す受入検査の記録表です。指定値と許容差の範囲を先に書き、その場で判定できる形にしています。
Excelを見る・ダウンロードスランプ試験で外れたときの扱い
スランプ試験の結果が許容差を外れたときの扱いは、発注者の仕様書や施工計画書で決めておく部分です。外れてから決めると、待っている生コン車の時間だけが過ぎていきます。
一般には、次の順で動く現場が多くあります。
- その車のコンクリートは打込みに回さず、いったん保留する
- 測った値・時刻・車番を記録表に書く
- 生コン工場と監督職員に連絡し、扱いを協議する
- 次の車で測り直し、続けて外れないかを見る
長野県の「生コンの品質管理の取扱い」では、試験結果が基準を満足しない場合は生コン供給者と協議し、配合の変更などの措置をとるとしています。また、納入書の備考にはスランプや空気量の試験をした場合の数値を書くことになっています。外れた値も、通った値と同じように納入書と記録表の両方に残しておきます。
単位水量は再試験の決まりがはっきりしている
スランプと関係が深いのが単位水量です。品質管理基準では、測った単位水量が配合設計±15kg/m3の範囲ならそのまま施工、±15〜20kg/m3なら原因を調べて工場に改善を指示しつつその車は打設、±20kg/m3を超えたら打込まずに持ち帰らせる、という3段の扱いが決められています。測定値が管理値や指示値を超えた場合は1回に限り再試験ができ、2回のうち配合設計との差が小さいほうで評価してよいとされています。
スランプが大きく外れたときは、水が多い可能性を疑って単位水量も確かめる、という順で考えると原因に早くたどり着きます。
スランプ試験の結果を自分の現場で使う
外れた記録が残っていれば、工場と話すときに「何台目から」「どの時間帯に」という形で伝えられます。暑い日の午後に下がる、待ち時間が長い車で下がる、といった傾向が見えれば、出荷の間隔や打設の段取りを変える材料になります。品質管理のやり方の記事で書いている「記録を次の判断に使う」の考え方と同じです。
スランプ試験の最近の動き|スランプ値は「参考値」へ
スランプ試験をめぐっては、国土交通省の直轄土木工事で大きな見直しが進んでいます。経緯を順に並べます。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2017年4月 | 一般的な鉄筋コンクリート構造物はスランプ12cmを標準とし、特記仕様書に明記する通知(8cmでは締固めが難しいとされた) |
| 2025年2月 | コンクリート生産性向上検討協議会で、委員から「スランプ検査の省略は良い方向性」との意見 |
| 2026年3月18日 | 特記仕様書では積算上のスランプ値を「参考値」として示し、契約後に受発注者で確認して協議のうえ指定できる、と改正する通知 |
| 2026年4月1日 | 上の改正通知の適用開始(この日以降に入札契約手続きを始める工事) |
2026年3月の通知は、12cm標準が大部分の現場に広まった一方で、構造物の種類などに応じて柔軟にスランプを変えることまでは浸透していない、という認識から出されています。スランプの値を発注者が一律に決める形から、契約後に現場の条件で決める形に移る、というのが今回の変化の中身です。
「スランプ試験が廃止される」わけではない
検索すると「スランプ試験 廃止」という言葉が出てきますが、この記事を書いた時点で、受入検査としてのスランプ試験をやめるという通知は確認できていません。協議会の資料では、スランプ明記の廃止や、品質管理・検査の省力化に向けたあり方の検討が今後の項目として挙がっている段階です。
現場で変わるのは、どのスランプで注文するかを協議で決める場面が増えることです。指定値が工事ごとに変わるなら、許容差の範囲も工事ごとに変わります。記録表の「指定値と許容差」の欄を毎回書き直す運用にしておくと、新しい決め方にもそのまま合わせられます。
まとめ
スランプ試験は、荷卸し地点で生コンの軟らかさを確かめる受入検査で、JIS A 1101 の手順で行います。3層に分けて各25回突き、コーンを2〜3秒で垂直に引き上げ、中央の下がりを0.5cm単位で記録します。許容差は指定したスランプで変わり、12cmなら±2.5cmです。
頻度は荷卸し時に1回/日以上、または工事の規模に応じて20〜150立方メートルごとに1回が基本で、変化を感じたら追加で測ります。外れたときの扱いは事前に決めておき、測った値は納入書と記録表の両方に残します。2026年4月からは直轄工事でスランプ値を「参考値」とし、契約後に協議で決める形に変わっているので、指定値と許容差は工事ごとに書き直せる記録表にしておくと迷いません。
よくある質問
スランプ試験の許容差はいくつですか
指定したスランプによって変わります。品質管理基準では、2.5cmは±1.0cm、5cm以上8cm未満は±1.5cm、8cm以上18cm以下は±2.5cmです。工事の特記仕様書で別に定めている場合はそちらに従います。
スランプ試験は何回やればよいですか
品質管理基準では、荷卸し時に1回/日以上、または構造物の重要度と工事の規模に応じて20〜150立方メートルごとに1回、さらに品質の変化が認められたときとされています。道路橋の床版は原則として全運搬車です。
スランプ試験は廃止されたのですか
この記事を書いた時点で、受入検査としてのスランプ試験を廃止する通知は確認できていません。2026年3月の通知で変わったのは、特記仕様書に示すスランプ値を「参考値」とし、契約後の協議で指定できるようにした点です。
スランプ試験で外れた車はどうしますか
扱いは仕様書や施工計画書で決めておく部分です。一般には、その車を保留し、値を記録して工場と監督職員に連絡し、協議して決めます。単位水量が指示値を超えた場合は、打込まずに持ち帰らせることが品質管理基準に定められています。
スランプ試験は誰が測りますか
受入検査は施工者(受注者)が行うものです。生コン工場などに試験を代行させる場合でも、土木工事共通仕様書(案)では受注者が臨場しなければならないとされています。
引き上げに時間がかかったらどうなりますか
コーンは30cmの高さまでを2〜3秒で引き上げ、詰め始めてから引き上げが終わるまでを3分以内とします。時間を超えたり、形が大きく崩れたりした結果は採らずに、新しい試料で測り直します。
コンクリート受入検査記録表(スランプ・空気量・塩化物量ほか)
荷卸し地点で行うスランプ試験と、空気量・コンクリート温度・塩化物量の測定を、運搬車ごとに1行で残す受入検査の記録表です。指定値と許容差の範囲を先に書き、その場で判定できる形にしています。
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