書類・帳票・記録実務2026.08.27 公開SR-02

工事台帳の管理方法|記載項目・作り方・原価との紐づけ

目次

工事台帳は、名前が似た書類が複数あるため混同されやすいところです。原価を管理する工事台帳、建設業法上の帳簿、施工体制台帳。それぞれ目的も、記載する内容も、保存期間も違います。

この記事では、工事台帳の管理方法を、まず用語の整理から始め、記載項目、作り方、原価との紐づけの順に説明します。法令に関わる部分は確認できる範囲でだけ書き、判断に迷う点は専門家への確認をお勧めします。

原価管理そのものの進め方は「原価管理のやり方」で扱っています。

結論:「工事台帳」と呼ばれる3つの書類を区別する

工事台帳という言葉は、現場では次の3つを指して使われます。

呼ばれ方目的主な内容保存期間
工事台帳(原価管理)工事ごとの収支を把握する請負金額、実行予算、原価、出来高会計・税務の要請による
建設業法上の帳簿許可業者としての記録義務契約内容、下請の情報など原則5年(一部10年)
施工体制台帳施工体制を明らかにする元請・下請の情報、技術者、許可5年(一部10年)

ポイントはここです。社内で「工事台帳」と言ったときにどれを指すのかを決めておく。ここが曖昧だと、必要な記録が抜けます。

この記事では、主に原価管理としての工事台帳を扱います。

3つの台帳の目的・内容・保存期間を並べた比較図

工事台帳(原価管理)の記載項目

基本情報

項目内容
工事番号(現場コード)社内の管理番号
工事名契約上の名称
発注者会社名・担当者
工期着工日・完成予定日・実際の完成日
請負金額契約金額(変更があれば変更後も)
現場代理人・主任技術者氏名

原価の内訳

工事原価は、材料費・労務費・外注費・経費の4区分で管理するのが一般的です。

区分中身
材料費資材、仮設材、消耗品
労務費自社作業員の人件費
外注費協力会社への支払
経費機械賃料、運搬、電力、保険、現場管理費

管理する数字

各区分について、次の4つを並べます。

  • 実行予算:使ってよい金額
  • 発注済:すでに約束した金額
  • 実際原価:発生した金額
  • 出来高:施工が進んだぶんの金額

「発注済」を持つのが重要です。発注した時点で金額は確定するため、実際原価だけを見ていると手遅れになります。

工事台帳の作り方

手順1:工事番号を採番する

受注時に工事番号を採番し、以降のすべての書類にこの番号を入れるようにします。発注書、日報、写真フォルダ、請求書。番号でつながっていると、集計が正確になります。

手順2:請負金額と実行予算を入れる

着工前に実行予算を組み、台帳に入れます。実行予算がないと、原価が高いのか安いのか判断できません。組み方は原価管理のやり方で扱います。

手順3:発注のたびに記入する

発注書を出したら、その日に台帳へ1行足します。月末にまとめて入力すると、抜けと転記ミスが出ます。

手順4:月1回、原価と出来高を締める

月末に、実際原価と出来高を確定させます。実行予算との差を見て、原因を記録します。

手順5:竣工時に実績をまとめる

完成したら、最終的な原価と粗利を確定させます。このとき、実行予算との差の原因を1枚のメモに残すと、次の現場の積算精度が上がります。

工事台帳と他の記録の紐づけ

日報との紐づけ

工事台帳の労務費は、日報の人員データから計算できます。会社別・工種別の人工を集計し、単価をかけます。日報に人数が書かれていないと、この計算ができません。

発注書・請求書との紐づけ

発注書に工事番号を入れておくと、経理側で自動的に現場ごとに振り分けられます。工事番号のない発注が、原価が混ざる一番の原因です。

出来高との紐づけ

出来高は、工種ごとの完了数量に単価をかけて出します。日報の数量データが元になります。進捗管理と原価管理は、日報という同じ元データを使っています。

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日報の様式に人員と数量の欄がない現場では、様式を変えるところから始めると集計が回り出します。

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建設業法上の帳簿について

建設業の許可を受けた業者には、営業所ごとに帳簿を備え、保存する義務があります。

書類保存期間
帳簿とその添付書類原則5年(発注者と締結した住宅を新築する建設工事は10年)
営業に関する図書(完成図、打合せ記録、施工体系図など)10年

起算点は、建設工事の目的物の引渡しをしたときです。工事の完了時点ではなく、引き渡し時点から数えます。

記載事項や添付書類の詳細は、建設業法および施行規則で定められています。自社が何をどこまで備える必要があるかは、行政書士や許可行政庁の窓口に確認してください。

施工体制台帳について

施工体制台帳は、発注者から直接請け負った特定建設業者が、一定金額以上の下請契約を結んだ場合などに作成が必要になる書類です。

作成義務の金額基準は、2025年2月1日施行の建設業法施行令の改正により、下請代金の総額5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)に引き上げられました。公共工事では、下請契約を締結した時点で金額にかかわらず作成が必要とされています。

保存期間は5年(発注者と締結した住宅を新築する建設工事は10年)、施工体系図は営業に関する図書として10年です。

工事台帳から現場の収支を読む

工事台帳は、数字を並べるだけでは使えません。どこを見れば手を打てるかを知っておくと、月次の確認が短時間で終わります。

見るのは「出来高と実際原価の関係」

工事台帳で最初に見るのは、工種ごとの出来高と実際原価の関係です。

状態見立て
出来高 > 実際原価順調。または原価の計上が遅れている
出来高 ≒ 実際原価予定どおり
出来高 < 実際原価原価が先行。このままだと予算を超える

3つ目が続いている工種は、対策の対象です。工事全体で見ると打ち消し合って見えないので、必ず工種ごとに見ます。

発注済を見て、残りを把握する

実行予算から発注済を引くと、まだ使える金額が分かります。この残額が少ないのに工事がまだ半分なら、その時点で赤字が確定しています。

発注は約束なので、後から減らせません。発注前に予算と照らすのが、工事台帳を持つ一番の意味です。

追加・変更の反映を確認する

設計変更や追加工事が出たとき、請負金額と実行予算の両方を直さないと、台帳の数字が実態と合わなくなります。

よくあるのは、原価だけ増えて請負金額が据え置きのまま、という状態です。この場合、台帳上は赤字に見えますが、実際は追加請求の交渉が済んでいないだけ、ということがあります。

竣工時に差の原因を残す

工事が終わったら、実行予算と実績の差を工種ごとに見て、原因を1枚のメモに残します。

「A工種は数量が2割増えた。原因は設計変更で、追加請求済み」 「B工種は手待ちで人工が3割増えた。原因は材料の納期見込み違い」

この1枚が、次の現場の実行予算の精度を上げます。残していない会社が多く、同じ見込み違いを繰り返す原因になっています。

現場と本社の役割

数字を作るのは本社(工務・経理)、原因を説明するのは現場、という分担が回りやすい形です。現場に集計まで求めると、本来の業務が圧迫されます。現場は、日報と発注の記録を正確に残すところまでを担当します。

工事台帳の管理でよくある失敗

失敗起きること直し方
3つの台帳を混同する必要な記録が抜ける社内で呼び分けを決める
工事番号を発注書に入れない現場間で原価が混ざる発注書の必須項目にする
実行予算を入れない高いか安いか判断できない着工前に組んで台帳に入れる
発注済を管理しない手遅れになってから気づく発注のたびに1行足す
月末にまとめて入力抜けと転記ミスが出る発生日に入力する
竣工後に差の原因を残さない次の積算に活きない1枚のメモを残す

よくある質問

工事台帳はExcelで作れますか

作れます。工種を行、実行予算・発注済・実際原価・出来高を列にした表から始められます。現場数が増えて集計に時間がかかるようになったら、会計ソフトや原価管理システムを検討する段階です。作り方は現場管理をExcelで行う方法にまとめました。

小さい会社でも工事台帳は必要ですか

工事ごとの収支を把握するという意味では、規模にかかわらず必要です。A4で1枚、工種10行程度でも十分に役に立ちます。建設業許可を受けている場合は、建設業法上の帳簿の備え付けが別途必要です。

工事台帳の保存期間はどのくらいですか

原価管理としての工事台帳は、会計・税務の要請によって保存期間が決まります。建設業法上の帳簿は原則5年、営業に関する図書は10年です。どの書類がどれに当たるかは、専門家に確認してください。

現場担当者が工事台帳を作るべきですか

会社によって分担が異なります。現場は日報と発注の記録を正確に残し、集計と台帳の維持は本社(工務・経理)が行うという分け方が一般的です。現場に集計まで求めると、本来の業務が圧迫されます。

工事台帳と原価管理表は別に作りますか

同じものとして扱っている会社もあります。工事ごとの収支が1枚で分かる形になっていれば、呼び方は問いません。重要なのは、実行予算・発注済・実際原価・出来高の4つが並んでいることです。

工事番号はどう採番しますか

年度+連番が扱いやすい形です(2601、2602…)。桁数を固定しておくと、並べ替えたときに順番が崩れません。この番号を発注書、日報、写真フォルダ、請求書のすべてに入れます。

追加工事は別の工事番号にしますか

会社によります。契約が別なら別番号、同じ契約内の変更なら同じ番号という分け方が一般的です。どちらにするかを社内で決めておかないと、集計が現場ごとに違う結果になります。

工事台帳はいつ作り始めますか

受注時です。着工してから作ると、すでに発注してしまった分を追認するだけになります。工事番号を採番した時点で台帳の行を作り、実行予算ができたら入れます。

経理と現場で数字が合いません

計上のタイミングが違うことが原因のことが多くあります。現場は発注時、経理は請求書の受領時に計上していると、月をまたいだときにずれます。どの時点で計上するかを決めて、台帳にも明記しておきます。

建設業許可がなくても帳簿は必要ですか

建設業法上の帳簿の備え付け義務は、許可を受けた業者にかかります。ただし、税務上の帳簿は許可の有無にかかわらず必要です。自社にどの義務があるかは、税理士や行政書士に確認してください。

まとめ

工事台帳の管理方法は、まず「工事台帳」と呼ばれる3つの書類を区別することから始まります。原価管理としての工事台帳、建設業法上の帳簿、施工体制台帳は、目的も保存期間も違います。

原価管理としての工事台帳では、材料費・労務費・外注費・経費の4区分について、実行予算・発注済・実際原価・出来高の4つを並べます。管理の要は、工事番号をすべての書類に入れることと、発注のたびに記入することです。竣工時には、実行予算との差の原因を1枚のメモに残してください。次の現場の積算精度が上がります。

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