建設現場の品質管理|検査・記録・是正の回し方
目次
建設現場の品質管理は、「きちんと施工する」だけでは終わりません。きちんと施工したことを、後から確認できる形で残すところまでが品質管理です。ここが抜けていると、施工に問題がなくても検査で指摘を受けます。
この記事では、建設現場の品質管理のやり方を、計画・検査・記録・是正の4段階に分けて整理します。何を、いつ、誰が確認し、どこに記録するかまで書きます。
結論:品質管理は「確認する項目を先に決める」と回り出す
建設現場の品質管理でつまずく一番の原因は、何を確認すべきかが施工前に決まっていないことです。施工が終わってから「この部分の写真がない」「測定値が残っていない」と気づいても、取り返せません。
品質管理は、次の順で回します。
- 施工前に、確認する項目・頻度・記録方法を決める(品質管理計画)
- 施工中に、決めた項目を確認して記録する
- 不適合が出たら、是正して再確認する
- 記録をまとめて提出できる形にする
ポイントはここです。1に時間をかけると、2〜4がほとんど自動で回ります。逆に1を飛ばすと、毎回その場の判断になり、担当者ごとにばらつきます。
品質管理のやり方【段階1:計画を立てる】
品質管理計画で決める5つのこと
建設現場の品質管理計画では、工種ごとに次の5つを決めます。
| 決めること | 例(鉄筋工事の場合) |
|---|---|
| 確認する項目 | 径・本数・間隔・かぶり・継手長さ |
| 判定基準 | 設計図・仕様書・各種基準の値 |
| 確認の頻度 | 部位ごと、階ごと、ロットごと |
| 確認する人 | 元請担当者、必要に応じて第三者 |
| 記録の方法 | 検査チェックシート、写真、測定記録 |
判定基準は必ず出典を持つ
品質管理の判定基準は、思い込みで決めません。設計図書、仕様書、共通仕様書、メーカーの施工要領書など、根拠のある数値を使います。公共工事では発注機関の仕様書が優先されます。
判断に迷う項目は、施工前に監督員や設計者へ確認して、その回答を記録に残しておきます。後から「そういう認識だった」では通りません。
隠れてしまう部分を先に洗い出す
品質管理の計画段階で必ずやるのが、後から見えなくなる部分の洗い出しです。埋設配管、地中梁の配筋、下地、防水層。これらは施工後に確認できないため、施工中の記録がすべてになります。
品質管理のやり方【段階2:施工中に確認する】
材料の受け入れ時に確認する
品質管理の最初の確認は、材料が現場に届いたときです。確認するのは、規格・数量・外観・納入書と試験成績書です。
受け入れ時に確認しないと、施工後に発覚したときの手戻りが大きくなります。受入検査記録に、日付・数量・確認者を残します。
施工中の立会検査を行う
工程の区切りで、施工が基準どおりかを確認します。配筋検査、型枠検査、溶接部の確認などが該当します。担当は元請の技術者で、必要に応じて監督員の立会を受けます。
立会が必要な検査は、工程表に検査日をあらかじめ入れておくと段取りがスムーズです。当日になって連絡すると、日程が合わず工程が止まります。
出来形を測定する
施工が終わった部分の寸法・位置・厚さなどを測定します。測定値は規格値と比べ、記録に残します。測定箇所と頻度は、仕様書や発注機関の基準に従います。
写真で残す
品質管理の記録として、写真は欠かせません。とくに隠れてしまう部分は、埋め戻す前が最後のチャンスです。撮影の順番と黒板の書き方は現場写真の撮り方で詳しく扱います。
品質管理のやり方【段階3:不適合が出たときの是正】
不適合が出たらまず記録する
品質管理で不適合が見つかったとき、すぐ直したくなりますが、先に状態を記録します。写真と測定値を残さずに直すと、何が起きて何をしたのかが後から説明できません。
是正の流れ
- 不適合の内容と範囲を記録する(写真・測定値)
- 原因を特定する(材料・施工方法・確認不足)
- 是正方法を決め、必要なら設計者・監督員に確認する
- 是正を実施し、記録する
- 再確認して、合格を記録する
- 同じことが起きないよう手順を見直す
5の再確認の記録が抜けることが非常に多くあります。直した写真はあるのに、それが基準を満たしているという確認記録がない、という状態です。
是正の記録に入れる項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発見日・発見者 | いつ、誰が見つけたか |
| 不適合の内容 | どこが、どう基準から外れていたか |
| 原因 | なぜ起きたか |
| 是正内容 | 何をしたか |
| 再確認日・確認者 | いつ、誰が合格を確認したか |
品質管理のやり方【段階4:記録をまとめる】
提出書類の形を先に確認する
品質管理の記録は、最終的に発注者へ提出します。提出の様式を着工前に確認しておくと、後からの並べ替えや作り直しがなくなります。
公共工事では、発注機関ごとに写真管理基準や出来形管理の様式が定められています。国土交通省の写真管理基準では、工事写真は撮影箇所一覧表に示す撮影頻度に基づいて撮影することとされています。自社の判断で頻度を減らさないよう注意します。
記録の保存
品質管理の記録は、竣工後も一定期間保存します。建設業法では、完成図や打合せ記録などの営業に関する図書は10年間の保存が義務づけられています。年数の一覧は工事書類の保存期間と保存方法にまとめました。
品質管理のチェックシートを作る
品質管理の記録は、チェックシートの出来でほとんど決まります。シートに書いてあることは確認され、書いていないことは確認されません。だからこそ、作るときに時間をかける価値があります。
確認項目は仕様書から拾う
チェックシートの項目は、思いつきで並べません。設計図書、仕様書、共通仕様書、メーカーの施工要領書から拾います。根拠のない項目を入れると、判定基準が決められず「良」で埋まるだけのシートになります。
拾った項目には、判定基準を必ず併記します。「かぶり厚さ」ではなく「かぶり厚さ(設計値40mm、許容差◯mm)」と書いておくと、測って比べるだけで判定できます。
判定は数値か二択にする
品質管理のチェックシートで避けたいのは、判断が要る欄です。「良好」「おおむね良好」といった選択肢があると、書く人によって基準が変わります。
数値を書く欄と、合否の二択の欄だけにすると、誰が記入しても同じ結果になります。数値が取れない項目は、写真を撮る欄に置き換えるほうが確実です。
誰が記入するかを欄に書く
同じシートを元請と職長が両方使うと、どちらが書いたか分からなくなります。記入者と確認者の欄を分けておくと、責任の所在がはっきりします。
立会が必要な項目には、立会者の欄も設けます。監督員の立会を受けた記録は、後から作れません。
是正欄をシートの中に作る
不適合が出たときに書く場所がないと、別紙になって散逸します。シートの下部に「不適合の内容/原因/是正内容/再確認日/確認者」の欄を作っておくと、1枚で完結します。
とくに再確認日と確認者の欄は必ず入れます。是正した写真はあるのに、それが基準を満たしているという確認記録がない、という状態が最も多い不備です。
使ってから直す
最初から完璧なシートは作れません。1か月使って、書かれなかった欄と、迷った欄を洗い出して直します。書かれなかった欄は不要か、書き方が分からない欄のどちらかです。迷った欄は、判定基準が足りていません。
この見直しを1回やるかどうかで、その後の記録の質がかなり変わります。
品質管理でよくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 確認項目を施工前に決めない | 記録の抜けに後から気づく | 品質管理計画を工種ごとに作る |
| 隠れる部分の写真を撮り忘れる | 証明できず、はつり出しになる | 隠れる部分を先に洗い出す |
| 是正の再確認を記録しない | 合格の証拠が残らない | 是正記録に再確認欄を設ける |
| 判定基準を思い込みで決める | 検査で不合格になる | 仕様書・基準書の値を使う |
| 検査日を工程表に入れない | 立会が取れず工程が止まる | 検査日を工程に組み込む |
| 記録を竣工前にまとめる | 直前に残業が集中する | 月1回、抜けを点検する |
検査の種類と、それぞれで残すもの
品質管理は「検査」という言葉でまとめられがちですが、種類によって誰が立ち会い、何を残すかが違います。
形状・寸法が設計どおりかを測って残す出来形管理については、出来形管理とはと出来形管理表の書き方で扱っています。
| 検査 | 誰が行うか | いつ | 残すもの |
|---|---|---|---|
| 社内検査(自主検査) | 施工した会社/元請 | 各工程の完了時 | 検査記録、写真 |
| 立会検査 | 監督員・発注者が立ち会う | 隠れる前、節目 | 検査記録、立会者の氏名、写真 |
| 中間検査 | 発注者・第三者機関など | 工事の中間 | 検査結果通知 |
| 完成検査 | 発注者 | 引き渡し前 | 検査記録、是正の記録 |
| 材料の受入検査 | 受け入れる側 | 搬入時 | 納品書、ミルシート等の品質証明 |
社内検査を飛ばして立会検査に臨まないでください。その場で是正が出ると、監督員の時間を使うことになり、次の検査の日程にも影響します。
立会検査の前日にやること
- 社内検査を済ませ、是正を終わらせておく
- 図面・仕様書の該当箇所を手元に用意する
- 測定器具の校正の状態を確認する
- 前回の検査で指摘された箇所を、先に自分で見る
- 検査に必要な足場・照明・立入経路を確保する
5が抜けると、検査そのものが始まりません。見る場所に行けない、暗くて見えない、という理由で検査が延びることがあります。
品質記録の残し方
品質記録は、後から「正しく施工した」ことを示すための資料です。写真だけでは足りず、数値が要ります。
数値で残すもの
| 対象 | 測るもの | 残し方 |
|---|---|---|
| コンクリート | スランプ、空気量、温度、供試体の強度 | 試験結果の記録、伝票 |
| 鉄筋 | かぶり厚、間隔、継手長さ | スケールを入れた写真+測定値 |
| 溶接 | 開先、脚長、外観、超音波探傷 | 検査記録 |
| 締固め | 密度、含水比、層厚 | 測定位置と値の一覧 |
| 配管 | 勾配、水圧試験、絶縁抵抗 | 試験記録 |
| 仕上げ | 平坦さ、目地、色差 | 測定位置と値 |
測定は「何か所測ったか」まで残します。1か所だけの測定では、全体が規格値内であることの説明になりません。
是正の記録は前後をセットで
指摘があった箇所は、是正前と是正後を同じ画角で撮ります。是正後だけの写真では、何を直したのか分かりません。
- 是正前:指摘された状態が分かるように(黒板に指摘内容)
- 是正後:同じ位置から、直った状態
- 記録:指摘日、指摘者、内容、是正日、確認者
品質のばらつきを減らす
同じ会社が施工しても、日によって出来が変わることがあります。原因は技能より、条件の変動であることが多くあります。
| 変動する条件 | 起きること | 手当て |
|---|---|---|
| 人が変わる | やり方が変わる | 作業手順書を現場に貼る。初日は立ち会う |
| 天候・気温 | 材料の状態が変わる | 施工可能な条件を先に決めておく |
| 材料のロットが変わる | 色・性状が変わる | 同じ面は同一ロットで施工する |
| 急がせた日 | 手順が省略される | 遅れを工程で吸収し、当日の作業量を無理に増やさない |
「急がせた日に品質が落ちる」のは、どの現場でも起きます。工程の遅れを当日の作業量で取り返そうとすると、最初に削られるのが確認の手順です。工程で吸収する方法は工程管理のやり方で扱います。
よくある質問
品質管理と施工管理の違いは何ですか
施工管理は工程・原価・品質・安全の4つを含む全体の呼び名で、品質管理はその1つです。品質管理は「仕様どおりにできているかを確認して記録する」部分を指します。
民間工事でも公共工事と同じ品質管理が必要ですか
法令上の要求は工事によって異なりますが、記録を残す実務は民間でも同じように必要です。引き渡し後に不具合が出たとき、施工が適切だったことを示せるのは記録だけです。契約書と仕様書で求められている範囲を確認して決めます。
小規模な工事でも品質管理計画は必要ですか
A4で1枚でも構いません。工種・確認項目・頻度・記録方法の4列の表を作るだけで、記録の抜けはかなり減ります。規模に応じて粒度を変えれば十分です。
検査で毎回同じ指摘を受けます
指摘の内容を3か月ぶん記録して、同じ項目が繰り返されていないか確認してください。繰り返しているなら、施工手順か確認のタイミングに原因があります。個人の注意では直りません。
品質管理の記録は誰が作りますか
元請の技術者が作るのが基本です。協力会社に作らせる場合も、内容の確認は元請が行います。確認せずに受け取ると、検査時に不備が見つかります。
検査で不合格になったらどうなりますか
是正して再検査を受けます。是正の記録(不適合の内容・原因・是正内容・再確認)を残すことが重要で、直した写真だけでは合格の証明になりません。
民間工事でも検査記録は必要ですか
契約と仕様書で求められている範囲を確認します。求められていなくても、引き渡し後に不具合が出たときに施工が適切だったことを示せるのは記録だけです。自社基準で残しておく価値があります。
材料の試験成績書はどう扱いますか
受け入れ時に確認し、記録として保管します。現物の写真と成績書を対応づけておくと、後から追えます。ロット番号が記録に残っていると、問題が起きたときの範囲が特定できます。
品質管理と施工記録は同じものですか
重なりますが、目的が違います。品質管理は基準を満たしているかの確認、施工記録は何をやったかの記録です。品質管理の記録は施工記録の一部として保管されます。
検査項目が多くて時間が足りません
項目を減らす前に、確認のタイミングを分散できないかを見ます。工程の区切りごとに少しずつ確認すれば、まとめて検査するより短時間で済みます。あわせて、判定を数値と二択にすると迷う時間が減ります。
まとめ
建設現場の品質管理のやり方は、計画・確認・是正・記録の4段階で回します。一番効くのは施工前の計画で、確認する項目・判定基準・頻度・担当・記録方法を工種ごとに決めておくことです。
施工中は、材料の受け入れ、立会検査、出来形測定、写真の4つで記録を残します。とくに隠れてしまう部分は、施工中が最後のチャンスです。不適合が出たら、直す前に記録し、是正後の再確認まで残します。この形が固まると、竣工前の書類作成が一気に楽になります。