複数現場の管理方法|1人で3〜10現場を回すときの型
目次
複数現場の管理は、1現場のやり方をそのまま人数分こなす、という発想では続きません。移動時間だけで1日が終わり、どの現場も中途半端になります。掛け持ちが3現場を超えたあたりから、やり方そのものを変える必要が出てきます。
この記事では、複数現場の管理方法として、現場に行く回数の決め方、行かない日に状況を把握する方法、書類の抜けを防ぐ仕組みを整理します。1人で3〜10現場を持つ担当者を想定して書きます。
結論:複数現場の管理は「行く現場を減らす」のではなく「行かない日の見え方を作る」
複数現場の管理でつまずく原因は、全部の現場に同じ密度で関わろうとすることです。物理的に無理があるので、どこかが必ず薄くなります。しかも、薄くなった現場ほど問題が起きます。
一般には、次の2つを分けて考えます。
- 現場に行く日:目で見ないと分からないこと(安全、品質、取り合い)に集中する
- 行かない日:記録で状況が分かる状態を作っておく
ポイントはここです。複数現場の管理は、記録の質で決まります。行かない日に日報も写真も上がってこない現場は、次に行ったときに手遅れになっています。
複数現場の管理を始める前に決める3つのこと
決めること1:現場ごとの優先度
複数現場を同じ扱いにすると回りません。危険度と難易度で分けて、行く回数を変えます。
| 区分 | 特徴 | 訪問頻度の目安 |
|---|---|---|
| A:重点現場 | 高所・重機・新規業者・工期が厳しい | 毎日または隔日 |
| B:標準現場 | 慣れた工種、実績のある業者 | 週2〜3回 |
| C:軽微・待機現場 | 単純作業、または休止中 | 週1回 |
区分は固定ではなく、危険な工種に入る週だけAに上げるという運用にします。解体や重機作業の週は、慣れた現場でも重点に切り替えます。
決めること2:記録の様式を全現場で統一する
複数現場の管理では、様式がバラバラだと比較も集計もできません。日報、点検表、KY用紙、写真のフォルダ構成を、全現場で同じにします。
同じ様式なら、見るときに読み方を切り替えなくて済みます。10現場ぶんの日報を15分で目を通すには、この統一が前提になります。
決めること3:連絡の入口を1つにする
電話、メール、チャット、口頭がバラバラだと、どこに何があるか分からなくなります。相談は電話でよいとしても、記録が要るものは1か所に集めると決めておくと、後から探せます。詳しくは現場の情報共有を改善する方法で扱います。
複数現場の管理方法【1週間の回し方】
週の初めに訪問計画を決める
月曜の朝に、その週にどの現場へ何曜日に行くかを決めます。決める材料は、各現場の工程(危険な作業が入る日)、検査・立会の予定、新規入場者が入る日です。
危険な作業の日に行けない現場があるなら、その日は職長に確認事項を明示して依頼します。「行けないから任せる」ではなく、「この3点を確認して写真を送ってほしい」と具体的に伝えます。
移動の順番を工程で決める
複数現場を1日で回るとき、地理的な近さだけで順番を決めると、朝の立ち会いに間に合いません。朝礼に立ち会う必要がある現場を先に、確認だけの現場を午後に回すのが基本です。
行かない日は記録で確認する
行かない現場は、その日のうちに日報と写真で確認します。見るのは3点です。
- 予定どおりの作業と人数だったか
- 点検表とKY用紙が上がっているか
- 写真に危険な状態が写っていないか
3が意外と効きます。作業の写真の背景に、開口部の養生外れや通路の材料仮置きが写っていることがあります。
複数現場の管理で職長に渡す範囲
職長に渡せる業務
複数現場を持つと、1人で全部は持てません。次の業務は職長へ渡せます。
- 自社作業のKY活動と作業日報
- 作業開始前点検(機械・工具)
- 自社作業員への指示と人員配置
- 作業場所の整理整頓の確認
渡すときに必ずセットで伝える3つ
業務を渡すときは、様式・提出先・期限の3つをセットにします。どれか1つでも曖昧だと戻ってきません。
「この点検表を使って、毎朝作業前に記入し、現場事務所のこのファイルに綴じてください。写真は当日中にこの宛先へ送ってください」という粒度まで具体化します。
元請として残す業務
一方で、次は渡せません。元請の義務として自分でやる必要があります。
- 作業場所の巡視(毎作業日に少なくとも1回、労働安全衛生規則第637条)
- 協議組織の設置と会議の開催(同第635条)
- 作業間の連絡調整
- 発注者への報告と工程の判断
巡視が義務である以上、行かない日を作る現場でも、代わりに巡視できる体制が必要になります。同じ会社の別の担当者が入る、店社の安全担当が回るなど、社内で分担を決めておきます。
複数現場を回る1日のモデル
掛け持ちの1日は、移動を軸に組み立てます。朝礼に立ち会う必要がある現場を先に、確認だけの現場を午後にというのが基本の形です。
3現場を回る日の例
| 時刻 | 場所 | やること |
|---|---|---|
| 7:00 | 事務所または車内 | 3現場の当日予定と前日の日報を確認 |
| 7:30 | A現場(重点) | 朝礼・KY立会、作業開始前点検の確認 |
| 9:00 | A現場 | 巡視、当日の危険作業の立会 |
| 10:30 | 移動 | B現場へ |
| 11:00 | B現場(標準) | 巡視、職長と翌日の段取り確認 |
| 12:00 | 昼休み | |
| 13:00 | C現場(標準) | 巡視、検査立会、写真 |
| 15:00 | 移動・事務所 | 発注、書類、連絡 |
| 16:30 | 事務所 | 3現場ぶんの日報確認、翌日の段取り連絡 |
重点現場を朝に置くのは、危険な作業が午前に始まることが多いためです。午後から始まる作業がある日は、順番を入れ替えます。
行けない現場の埋め方
3現場を毎日は回れません。行けない日は、次の形で埋めます。
- 前日に、職長へ確認してほしい3点を具体的に伝える
- 当日、写真で状況を送ってもらう
- その日のうちに日報と点検表を確認する
- 気になる点があれば電話で確認する
ただし、作業場所の巡視は元請の義務です。労働安全衛生規則第637条により毎作業日に少なくとも1回とされているため、自分が行けない日は社内で代わりの担当を決めておきます。
移動時間を減らす工夫
| 工夫 | 効果 |
|---|---|
| 書類の提出を週1回にまとめる | 帰社の回数が減る |
| 現場ごとのファイルを同じ並びにする | 出発前の準備がなくなる |
| 発注・連絡を移動の合間に済ませる | 事務所での作業時間が減る |
| 現場の近くで昼休みを取る | 往復が1回減る |
「書類のための移動」が週に何回あるかを数えると、削れる移動がはっきりします。
複数現場の管理でよくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 全現場を同じ頻度で回る | 移動で1日が終わる | 危険度で訪問回数を変える |
| 現場ごとに様式が違う | 集計も比較もできない | 全現場で様式を統一する |
| 行かない日の記録を見ない | 次に行くと手遅れ | 日報・点検・写真を当日確認する |
| 職長への依頼が口頭だけ | 何も上がってこない | 様式・提出先・期限をセットで渡す |
| 書類を月末にまとめる | 抜けが取り返せない | 週1回、全現場ぶんを一気に見る |
| 巡視を職長任せにする | 元請の義務を果たせない | 社内で巡視の分担を決める |
複数現場の管理を軽くする工夫
書類チェックを「現場ごと」ではなく「書類ごと」にやる
複数現場の書類を、現場ごとに1件ずつ見るとムラが出ます。今日は全現場の点検表、次は全現場の日報、というように書類の種類でまとめて見ると速く、抜けにも気づきやすくなります。
現場ごとの持ち物を固定する
現場ごとにファイルの中身が違うと、行くたびに準備が要ります。どの現場でも同じ並びのファイルを1冊置いておくと、移動前の準備がなくなります。
スマホで見られる状態にしておく
移動中に確認できるかどうかで、掛け持ちの負担はかなり変わります。日報や写真が事務所のパソコンにしかない状態だと、確認のために事務所へ戻る移動が発生します。
現場数が5を超え、記録の確認のために移動が発生しているなら、共有できる仕組みを検討する段階です。判断の目安はExcel管理とシステム管理の違いにまとめました。
よくある質問
1人で何現場までが限界ですか
工種と距離によるので一概には言えませんが、毎日巡視が必要な現場は2〜3が上限と考えている会社が多いようです。休止中や軽微な現場を含めれば数は増やせます。限界を超えているサインは、書類の抜けが常態化していることです。
掛け持ち現場の写真整理が追いつきません
現場ごとのフォルダを先に作り、その日のうちに移すルールにすると溜まりません。撮った端末に残したまま週末にまとめようとすると、どの現場か分からなくなります。整理の型は現場写真の整理・管理方法で扱います。
職長に任せると質がばらつきます
様式で揃えるのが基本です。判断を求める欄をなくし、選択式と数値記入に寄せると、書き手が変わってもばらつきが減ります。自由記入は「気づいたこと」の1欄だけにしておくと運用しやすくなります。
複数現場だと原価管理が特に大変です
現場ごとに実行予算を分け、発注時に現場コードを必ず入れる運用にすると集計が楽になります。発注書に現場名が入っていないのが、原価が混ざる一番の原因です。
複数現場を持つと、どうしても質が落ちます
全現場に同じ密度で関わろうとすると必ずどこかが薄くなります。危険度で訪問頻度を変え、行かない日は記録で見るという前提に切り替えると、質のばらつきが減ります。
現場が遠くて移動だけで疲れます
移動そのものを減らす工夫として、書類の提出を週1回にまとめる、現場の近くで昼休みを取る、といった方法があります。「書類のための移動」が週に何回あるかを数えると、削れる移動が見つかります。
現場ごとに協力会社が違って覚えられません
現場ごとのファイルに、体制図と連絡先を1枚目に入れておくと確認できます。どの現場でも同じ並びのファイルにしておくと、探す時間がなくなります。
掛け持ちで安全管理が不安です
作業場所の巡視は元請の義務で、毎作業日に少なくとも1回とされています。行けない日の代替を社内で決めておくことが前提になります。決めずに掛け持ちを増やすと、義務を果たせない日が出ます。
現場数を増やす前に何を整えるべきですか
様式の統一、記録の置き場所、連絡の入口、職長への分担。この4つが整っていれば、現場が増えても回し方は変わりません。整っていない状態で増やすと、書類の抜けが常態化します。
1人で回せる限界を超えているか、どう判断しますか
書類の抜けが常態化しているかどうかが分かりやすいサインです。週1回の書類チェックで毎回抜けが見つかる状態なら、現場数か分担のどちらかを見直す時期です。
まとめ
複数現場の管理方法は、全現場に同じ密度で関わるのをやめ、危険度で訪問頻度を変えるところから始まります。行く日は目で見ないと分からないことに集中し、行かない日は日報・点検記録・写真で状況を確認します。
そのためには、全現場で様式をそろえ、連絡の入口を1つに決めておくことが前提になります。職長へ業務を渡すときは、様式・提出先・期限をセットで伝えます。ただし作業場所の巡視は元請の義務なので、行けない日は社内で分担を決めておく必要があります。