現場管理を効率化する方法|先に削るべき5つのムダ
目次
現場管理の効率化というと、すぐにシステム導入の話になりがちです。ただ、道具を変える前に減らせるムダは意外と多く、先にそこを削っておかないと、道具を入れても同じ非効率をそのまま持ち込むことになります。
この記事では、現場管理を効率化する方法を、削るムダの種類ごとに整理します。お金をかけずに今週から手を付けられるものから順に並べ、最後に道具を変える判断のしかたを書きます。
結論:現場管理の効率化は「転記・移動・探す」の3つから削る
現場管理で時間を食っている作業は、たいてい価値を生まない3種類に集約されます。
| ムダ | 具体例 | 削り方の方向 |
|---|---|---|
| 転記 | 紙からExcelへの打ち直し | 入力場所を1つにする |
| 移動 | 書類を出すためだけの帰社 | 現場で完結させる |
| 探す | 最新版・過去の記録を探す | 置き場所と命名を決める |
ポイントはここです。この3つは、どれも「がんばる」では減りません。仕組みを変えないと、担当者が変わっても同じ時間がかかります。逆に言えば、仕組みを1つ変えるだけで、毎日の時間が確実に戻ってきます。
現場管理を効率化する方法1:転記をなくす
同じ情報を何回書いているかを数える
まず、1つの情報を何回書いているかを数えてみてください。よくあるのは、次のような流れです。
- 現場で職長が作業日報を紙に書く
- 現場担当者が工事日報に転記する
- 事務所でExcelの集計表に打ち直す
- 月次報告書に貼り直す
同じ数量を4回書いています。しかも、書き写すたびに間違いが混ざるので、確認の手間も増えます。
転記を減らす順番
転記は、上流から止めるのが基本です。下流だけ自動化しても、元が紙のままなら結局誰かが打ちます。
- まず、現場で書いたものをそのまま使える形にする(様式を統一する)
- 次に、集計に使う項目だけをデータ化する(全部をデータにしない)
- 最後に、報告書は集計から自動で作る
現場の記録すべてをデータ化しようとすると挫折します。集計に使う数量・人数・日付だけをデータにして、それ以外は紙のままでも十分に効果が出ます。
様式を1本化する
同じ内容の様式が会社ごと・現場ごとに違うと、転記が発生します。全現場・全協力会社で同じ様式を使えば、集める側の作業がそのまま減ります。自作にこだわらず、既成の様式を使うほうが早く揃います。
現場管理を効率化する方法2:移動を減らす
移動が発生している理由を特定する
現場管理の移動には、必要な移動(巡視・立会・検査)と、削れる移動があります。削れる移動の代表は次の3つです。
- 書類を提出・受け取るためだけの帰社
- 印刷や押印のための帰社
- 写真を取り込むための帰社
「書類のための移動」が週に何回あるかを数えると、削る対象がはっきりします。
現場で完結させる工夫
移動を減らす方法は、大きく2つです。1つは、提出のタイミングをまとめること。毎日戻るのをやめ、週1回に集約します。もう1つは、現場から出せる状態にすることです。写真や日報をその場で送れるようにすると、帰社の理由が1つ減ります。
巡視は減らさない
移動を減らすときに、巡視まで削らないよう注意します。特定元方事業者の作業場所巡視は、毎作業日に少なくとも1回行うことが労働安全衛生規則第637条で定められています。効率化の対象は書類のための移動であって、安全のための移動ではありません。
現場管理を効率化する方法3:探す時間をなくす
探す時間は見えにくい
1回3分でも、1日5回探せば15分、月に5時間になります。しかも本人は「作業した」と感じないので、改善の対象から外れがちです。
置き場所と命名を先に決める
探す時間を減らす方法はシンプルで、置き場所と名前のルールを決めて全員が守る、それだけです。
- フォルダ構成:現場 → 書類種別 → 年月 の3階層まで
- ファイル名:現場コード+書類名+日付
- 「最新」「修正版」「新」は使わない
3階層を超えると、しまう側が迷って別の場所に入れます。深くしないことが、探す時間を減らす一番の近道です。
紙は「綴じる順番」を固定する
紙の書類は、現場ごとにファイルの並びを固定します。どの現場でも同じ順番なら、初めて入る応援の担当者でも探せます。
現場管理を効率化する方法4:確認と手戻りを減らす
差し戻しが起きる場所を記録する
書類の差し戻しは、たいてい同じ箇所で起きます。どこで差し戻されたかを3か月ぶん記録すると、直すべき場所がはっきりします。記入漏れなのか、様式の分かりにくさなのか、伝達不足なのかで対策が変わります。
記入欄を減らす
書き手のミスを責める前に、様式そのものを見直します。使っていない欄を消し、自由記入を選択式に変えるだけで、記入率と正確さが上がります。詳しくは書類作成のミスを減らす方法で扱います。
現場管理を効率化する方法5:抱え込みをやめる
職長に渡せる業務を決める
現場管理を1人で抱えていると、効率化の余地がなくなります。KY活動、作業日報、作業開始前点検、自社作業員への指示は、職長に渡せる業務です。
渡すときは、様式・提出先・期限をセットで伝えます。これが曖昧だと戻ってきません。
本社に渡せる業務を決める
原価の集計、書類の保管、契約関係は、本社側に寄せられることが多い業務です。現場は記録を作るところまで、集計は本社、という分け方にすると、現場の負担が下がります。
効率化のためにシステムを入れるかどうか
道具を変える前にやること
システムを入れれば効率化する、とは限りません。転記の多い運用のままシステムを入れると、入力先が1つ増えるだけになることがあります。
先にやるのは、様式の統一、置き場所の固定、業務の分担です。この3つが済んでいると、システムを入れたときの効果が大きくなり、定着もします。
判断の目安
次のような状態なら、道具を変える検討に入る時期です。
- 転記のための作業が週に数時間ある
- 書類のためだけの移動が週に複数回ある
- 最新版がどれか分からなくなっている
- 現場数が増えて、集計に半日かかる
判断のしかたはExcel管理とシステム管理の違い、選び方は現場管理システムの選び方にまとめました。
効率化の効果を測る
現場管理の効率化は、測っていないと続きません。「なんとなく楽になった気がする」では、担当が替わったときに元のやり方に戻ります。逆に数字があれば、他の現場や他の業務へ広げるときの説明材料になります。
何を測るか
測るのは、時間と回数だけで十分です。金額に換算するのは後からできます。
- 対象業務にかかった時間(分)
- 書類を探した回数と、そのたびにかかった時間
- 書類のためだけに移動した回数
- 差し戻し・やり直しの件数
1週間ぶんでかまいません。1か月測ろうとすると、測ること自体が続きません。
いつ測るか
変える前に1週間、変えて1か月経ってからもう1週間。この2回で比較できます。変えた直後は慣れていないので遅くなることがあり、そこで測ると効果がないように見えてしまいます。1か月置いてから測るのはそのためです。
測った結果の使い方
時間が減っていれば、その業務は成功です。次の業務へ広げます。減っていなければ、原因を確認します。よくあるのは次の3つです。
- 紙と新しいやり方を併用していて、二度手間になっている
- 様式が整理されないまま形だけ変えた
- 決めたルールが一部の人にしか伝わっていない
どれも、道具の問題ではなく運用の問題です。道具を変える前に、この3つを潰すほうが早く効きます。
現場に共有する
測った結果は、変えることに協力してくれた職長や作業員に返します。「日報の記入が1日15分から7分になりました」と具体的に伝えると、次の改善への協力が得やすくなります。
効率化は、やらされていると感じた時点で止まります。結果を返すことが、続けるための一番安いコストです。
現場管理の効率化でよくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 全部を一度に変える | 元のやり方に戻る | 一番重い1つから変える |
| 現場に相談せず決める | 使われない | 職長を巻き込んで決める |
| 記録の項目を増やす | 入力時間が増える | まず使っていない欄を消す |
| 安全に関する手間まで削る | 法令違反や災害につながる | 巡視・点検・教育は削らない |
| 効果を測らない | 続ける理由が説明できない | 変える前に時間を測っておく |
よくある質問
何から手をつければ効果が出やすいですか
一番時間を取られている作業を1つ選ぶのが確実です。多くの現場では写真の整理か日報の転記です。1か月続けて、時間がどれだけ戻ったかを測ってから次に進みます。
効率化すると記録が雑になりませんか
記録の量ではなく、書く場所と回数を減らすのが効率化です。同じ内容を4回書くのを1回にしても、記録の中身は変わりません。むしろ転記ミスが減ります。
職長や協力会社が新しいやり方に反対します
反対の理由はたいてい「自分の手間が増えるから」です。相手の手間が減る部分から始めると受け入れられやすくなります。たとえば提出先を1つに減らす、記入欄を減らすといった変更は、現場側にも利点があります。
効率化の効果はどう測ればいいですか
変える前に、対象の作業にかかる時間を1週間ぶん測っておきます。転記にかかる分数、探した回数、書類のための移動回数の3つを記録しておくと、前後で比較できます。
効率化と安全はどちらを優先しますか
安全です。法令で定められた点検・巡視・教育・記録は効率化の対象にしません。削るのは、探す時間、迷う時間、転記の時間です。ここを取り違えると、災害が起きたときに取り返しがつきません。
効率化のために人を減らせますか
人を減らすためではなく、同じ人数で回せる現場数を増やす、または残業を減らすための取り組みと考えるほうが実態に合います。建設業では2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。
現場ごとにやり方が違って統一できません
工事の内容が違えば、やり方が違うのは当然です。統一するのは様式と記録の置き場所であって、作業のやり方ではありません。ここを分けて考えると、統一できる範囲がはっきりします。
効率化の提案が上に通りません
現状の作業時間を測った数字があると通りやすくなります。「月20時間かかっています」という一文が、感覚的な説明より強く伝わります。測るのは1週間で足ります。
一度改善したのに元に戻りました
決めたことが紙に残っていないか、担当が替わったときに引き継がれていないことが多くあります。ルールを1枚にして現場に貼り、新規入場者教育でも渡すと定着します。
どの業務から手を付けるか迷います
1週間、作業時間を測ってください。一番時間を取られている業務が、そのまま最初の対象です。多くの現場では写真の整理か日報の転記が上位に来ます。感覚で選ぶと、効果の小さい業務に手を付けがちです。
まとめ
現場管理を効率化する方法は、転記・移動・探す時間の3つを削るところから始まります。この3つは、がんばりでは減らず、仕組みを変えないと戻ってきません。
具体的には、様式を全現場で統一して転記を止める、書類のための移動を集約する、置き場所と命名のルールを決めて探す時間をなくす。あわせて、職長と本社に渡せる業務を決めて抱え込みをやめます。道具を変えるのはそのあとで、順番を逆にすると効果が出にくくなります。