工程表の作り方|バーチャートと工程の組み方
目次
工程表の作り方を調べると、バーチャート、ネットワーク工程表、ガントチャート、出来高累計曲線と、種類の説明ばかりが出てきます。ただ、現場で本当に知りたいのは「自分の現場ではどれを、どこまで細かく作ればいいのか」という部分です。
この記事では、工程表の作り方を種類の使い分けから入り、実際に引く手順、Excelで作るときの構成、そして作ったあとに更新を止めないための工夫まで書きます。
結論:工程表の作り方は「誰に見せるか」で種類を選ぶ
工程表の作り方で最初に決めるのは、細かさでも種類でもなく、誰が見る工程表かということです。見る人が変われば、必要な情報が変わります。
| 見る人 | 向いている工程表 | 求められること |
|---|---|---|
| 発注者 | バーチャート+出来高曲線 | 全体像と進捗率が分かる |
| 協力会社・職長 | 週間工程表(日付と場所) | 自分がいつどこに入るか分かる |
| 社内・自分 | バーチャート(予定と実績の2段) | 差がすぐ見える |
| 複雑な取り合いの検討 | ネットワーク工程表 | どの作業が全体を決めているか分かる |
ポイントはここです。1枚ですべてをまかなおうとすると、どの相手にも読みにくい工程表になります。全体工程と週間工程は分けて作るほうが、結果的に手間が減ります。
工程表の種類と使い分け
バーチャート工程表の作り方と向き不向き
バーチャート工程表は、縦に作業名、横に日付を取り、作業期間を横棒で示す形式です。工程表の中で最も広く使われています。
向いているのは、全体像を短時間で共有したいときです。誰でも読めるので、発注者への説明や現場掲示に適します。一方で、作業同士のつながり(この作業が遅れると何が動くか)は表現しにくく、複雑な取り合いの検討には向きません。
ネットワーク工程表の作り方と向き不向き
ネットワーク工程表は、作業を矢印や丸で結び、前後関係を線でつないだ形式です。全体の工期を決めている作業の連なり(クリティカルパス)が分かるのが最大の利点です。
向いているのは、工種が多く、取り合いが複雑な工事です。逆に、読める人が限られるという弱点があります。職長会で配っても、その場で理解してもらうのは難しいことが多く、週間工程はバーチャートで別に作るのが実務的です。
出来高累計曲線(Sカーブ)を添える
出来高累計曲線は、工期を横軸、出来高の累計を縦軸に取ったグラフです。バーチャートに添えて使うと、日程の遅れと金額の進みのズレが見えます。
工期の半分が過ぎたのに出来高が3割しかない、という状態は、日程だけ見ていると気づきにくいものです。発注者報告に添えると説明が早く済みます。
工程表の作り方【手順】
手順1:必要な情報をそろえる
工程表を作る前に、設計図と数量、契約工期、施工計画、協力会社の稼働可能日、材料の納期をそろえます。このうち協力会社の稼働と材料の納期は外部に聞かないと分からないので、先に確認しておきます。
手順2:工種を洗い出して並べる
工事を工種に分解します。粒度は、全体工程なら「土工事」「基礎」「躯体」「内装」といった単位、週間工程なら「2階東側 天井下地」といった単位が目安です。
洗い出しで抜けやすいのは、仮設・搬入・養生・検査・片付けです。作業そのものではないので忘れられがちですが、日数は確実に食います。
手順3:前後関係を決める
各工種について、「これが終わらないと着手できない」という制約を決めます。ここを決めておくと、後で組み替えるときに動かせる作業と動かせない作業が分かります。
手順4:日数を入れる
日数は、数量と歩掛と投入人数から計算します。過去の同種工事の実績があれば、それを優先します。実績がない工種は協力会社に直接聞くのが、結果的に一番正確です。
手順5:引き渡し日から逆算して配置する
引き渡し日を置き、検査・是正・片付けの日数を先に確保してから、工種を後ろから並べます。前から積み上げると、はみ出したときの調整先が見つかりません。
手順6:予備日と休日を入れる
天候不良や不測の事態に備えて予備日を入れます。屋外作業が多い工事では月2〜4日を見込む現場が多くあります。あわせて、休日と長期休暇も工程表に落とします。土日を稼働前提にした工程表は、時間外労働の上限規制がある今は現実的ではありません。
工程表をExcelで作るときの構成
Excelで工程表を作る基本の形
工程表はExcelでも十分に作れます。基本は、A列に工種名、B列に担当、C列に日数、D列以降を日付にして、セルの塗りつぶしで棒を表す形です。
作るときのコツは3つあります。
- 日付行を1行目に固定し、ウィンドウ枠を固定する(横スクロールしても工種名が見える)
- 土日・祝日の列に色を付ける(条件付き書式で自動化できる)
- 予定行と実績行を上下2段にする(差がひと目で分かる)
Excelの工程表で必ず入れておきたい列
| 列 | 入れる理由 |
|---|---|
| 工種名 | 見出しになる |
| 担当会社 | 誰に連絡すればいいか分かる |
| 予定開始日・終了日 | 並べ替えや検索に使える |
| 進捗率 | 出来高曲線の元データになる |
| 備考(遅れの理由) | 翌週の判断材料になる |
進捗率の列を数値で持っておくと、あとから集計やグラフ化ができます。塗りつぶしだけで表現していると、後で数字が取り出せません。
Excelの工程表が苦しくなる場面
Excelの工程表は、次のような状態になると管理が重くなります。
- 同時進行の現場が増え、ファイルが分散する
- 複数人が同時に編集して、最新版が分からなくなる
- 現場からスマホで見られない
- 工種が数百行になり、印刷もスクロールも重い
「最新版はどれ?」という会話が出はじめたら、共有できる形を検討する時期です。詳しくはExcel管理とシステム管理の違いで扱います。
Excelでバーチャート工程表を作る手順
専用ソフトがなくても実用的な工程表が作れます。条件付き書式で棒を描くのがポイントです。図形で棒を引くと、日程を変えるたびに引き直すことになります。
手順1:列に日付を並べる
- A列:工種
- B列:開始日
- C列:終了日
- D列以降:日付を1日1列で並べる
D1に工事開始日を入れ、E1に =D1+1 を入れて右へコピーします。表示形式を「d」にすると日だけが表示され、列幅が詰まります。
手順2:土日に色を付ける
日付の行を含む範囲を選び、条件付き書式(数式を使用して書式設定するセルを決定)に次を入れます。
=WEEKDAY(D$1,2)>=6
稼働できない日が見えるだけで、日数の入れ方が変わります。
手順3:バーを条件付き書式で描く
工種の行の範囲を選び、次の数式で塗りつぶします。
=AND(D$1>=$B2, D$1<=$C2)
開始日と終了日を書き換えるだけで、棒が自動で動きます。
手順4:今日の位置に線を入れる
同じ範囲にもう1つルールを足します。
=D$1=TODAY()
開いた瞬間に「今どこか」が分かります。予定と実績のズレが目に入るようになります。
手順5:実績の行を下に足す
各工種の下に「実績」の行を作り、同じ数式で別の色を付けます。予定と実績を上下に並べると、遅れがその場で分かります。
列の絶対参照を間違えないでください。日付は D$1(行を固定)、開始日・終了日は $B2(列を固定)です。ここを間違えると、1セルだけ色が付きます。
出来高累計曲線(Sカーブ)を作る手順
出来高曲線は、工事全体の何%が終わったかを時間軸で見るグラフです。作り方は5段階です。
- 週または月ごとに、予定の出来高(金額または数量)を並べる
- 累計を計算する(
=前の累計+今週の予定) - 全体に対する百分率にする
- 実績も同じように累計を出す
- 予定と実績の2本を折れ線グラフにする
S字になるのが正常です。着工直後と竣工前は進みが遅く、中盤で一気に進むためです。序盤から直線的に伸びる予定を組んでいるなら、その計画自体が実態と合っていない可能性があります。
曲線が下に離れたときに見る順番
| 順番 | 見るもの | どこを見るか |
|---|---|---|
| 1 | 人が足りていないか | 投入人工の実績 |
| 2 | 材料が届いていないか | 日報の手待ち欄 |
| 3 | 前工程が終わっていないか | 工程表の前後関係 |
| 4 | そもそも予定が過大だったか | 歩掛りの実績 |
4つ目を最後に置くのが要点です。先に計画を疑うと、現場で何が起きているかを見ずに数字だけ直すことになります。手待ちは日報にしか残らないため、工事日報の書き方で扱った手待ち欄が判断材料になります。
そのほかの工程表
現場の性質によっては、次の形が使われます。無理に使う必要はありませんが、指定されたときに何を見せる図か分かるようにしておきます。
| 種類 | 形 | 分かること | 使われる場面 |
|---|---|---|---|
| 工程管理曲線(バナナ曲線) | 上限・下限の2本の曲線と実績 | 進捗が許容の幅に入っているか | 大規模工事、長期の工事 |
| 座標式(斜線式)工程表 | 距離を縦軸、時間を横軸にした斜線 | 今どの位置を施工しているか | トンネル、道路、水路など線状の工事 |
| タクト工程表 | 同じ作業を階ごとに繰り返す形 | 各階の作業の流れと重なり | 中高層の建築、繰り返しの多い工事 |
線状の工事や、同じ作業を階ごとに繰り返す工事では、バーチャートだけだと重なりが見えません。該当する現場では、これらを併用します。
工程表を更新し続けるための工夫
更新する曜日と担当を決める
工程表が止まる一番の原因は、更新するタイミングが決まっていないことです。「毎週金曜の夕方に現場担当者が実績を入れる」のように、曜日と担当を固定します。
変更点だけを伝える
工程表を丸ごと配り直すと、どこが変わったのか誰も見ません。配るときに「A社の着手が3日後ろにずれました」と変更点を口頭で添えるだけで、伝達漏れが減ります。
全体工程を細かく作りすぎない
全体工程を作業単位まで細かく作ると、変更のたびに引き直しになり、更新が止まります。細かさは、直す手間と釣り合う範囲までにしておきます。細かい調整は週間工程で行います。
工程表を協力会社と共有するときの工夫
工程表は、配った時点では伝わっていません。受け取る側にとって必要なのは、全体像ではなく「自分がいつどこに入るか」です。
会社ごとに抜き出して渡す
全工種が載った工程表をそのまま渡すと、自社の行を探すところから始まります。その会社に関係する行だけを抜き出して渡すと、確認の精度が上がります。
Excelで作っているなら、フィルタで担当会社を絞って印刷するだけで済みます。
変更点を言葉で添える
工程表を更新して配り直すとき、どこが変わったのかは誰も見ません。「A社の内装着手が3日後ろにずれました。搬入も3日後ろです」と口頭で添えるだけで、伝達漏れが大きく減ります。
確定と予定を区別する
先の工程は変わる前提です。確定している範囲と、まだ動く可能性がある範囲を色や表記で分けると、協力会社が人の手配を判断しやすくなります。
| 区分 | 目安 | 表記の例 |
|---|---|---|
| 確定 | 直近1〜2週間 | 実線・濃い色 |
| 予定 | 3〜4週間先 | 破線・薄い色 |
| 見込み | それ以降 | 枠のみ |
「全部が確定に見える工程表」は、変更のたびに信用を落とします。先が動くことを最初から示しておくほうが、結果的に協力を得やすくなります。
掲示と配布を両方やる
現場事務所に掲示するだけだと、事務所に来ない作業員には届きません。掲示は全体像、配布は各社ぶんという使い分けにします。あわせて、旧版は必ず撤去します。古い工程表が貼られたままだと、それを見て動く人が出ます。
工程表の作り方でよくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 検査・是正の日数を入れていない | 竣工直前に作業が集中する | 逆算の最初に確保する |
| 仮設・搬入・養生を工種に入れない | 実際の日数が足りなくなる | 洗い出しのチェックリストを作る |
| 全体工程を作業単位まで細かくする | 変更のたびに引き直しで止まる | 全体は工種単位にする |
| 予定だけで実績を書かない | 遅れに気づけない | 予定と実績を上下2段にする |
| 職長に見せずに週間工程を確定する | 人が手配できず守られない | 打ち合わせてから配る |
よくある質問
工程表は手書きでもいいですか
問題ありません。現場に貼って毎日書き込むなら、手書きのほうが更新されやすいこともあります。ただし発注者提出用や、後から集計に使うものはデータで持っておくほうが扱いやすくなります。
バーチャートとネットワーク、どちらを作ればいいですか
多くの現場ではバーチャートで足ります。工種が多く、取り合いが複雑で、どの作業が工期を決めているかを検討する必要があるときにネットワークを併用する、という使い分けが実務的です。
工程表はどのくらいの頻度で作り直しますか
作り直すのではなく、同じ表に実績を書き足していくのが基本です。大きな設計変更や工期変更があったときだけ引き直します。頻繁に引き直しているなら、全体工程が細かすぎる可能性があります。
小規模工事でも工程表は必要ですか
工期が数日でも、作業の順番と誰がいつ入るかを1枚にしておくと手待ちが減ります。A4で1枚、工種5〜10行でも十分に役に立ちます。
工程表は誰が承認しますか
全体工程は発注者と合意するのが一般的です。社内では、現場代理人が作り、工務や上長が確認する形が多くあります。週間工程は現場で決めて構いませんが、職長との打ち合わせを経てから配ります。
工程表に休日をどう入れますか
土日祝、年末年始、夏季休暇を先に入れます。稼働できる日数を確定させてから工種を並べると、後からの調整が減ります。土日を稼働前提にした工程は、時間外労働の上限規制がある今は現実的ではありません。
工期が足りないと分かったときはどうしますか
発注者へ早い段階で相談します。「間に合いません」ではなく、必要な日数と、その根拠(数量と歩掛)を示すと話が進みます。着工前に分かった場合は、施工方法の変更で吸収できることもあります。
工程表のソフトは何を使えばいいですか
Excelで十分に作れます。専用ソフトが要るのは、ネットワーク工程表を頻繁に組み替える場合です。現場数が少なければ、Excelのバーチャートで回している会社が多くあります。
発注者から工程表の様式を指定されました
指定に従います。着工時に様式を確認しておくと、後からの作り直しがなくなります。社内用と提出用で様式が違う場合は、社内用の実績データから提出用を作る形にすると二重管理になりません。
工程表を作るのにどのくらい時間がかかりますか
工事の規模によりますが、情報がそろっていれば半日から1日です。時間がかかるのは、協力会社の稼働可能日と材料の納期を確認する部分なので、そこを先に済ませておくと作成そのものは短く済みます。
まとめ
工程表の作り方は、誰に見せるかで種類を選ぶところから始まります。全体像の共有はバーチャート、複雑な取り合いの検討はネットワーク、進捗の説明は出来高累計曲線という使い分けが一般的です。
引くときは引き渡し日から逆算し、検査・是正・片付けの日数を先に確保します。仮設・搬入・養生の抜けにも注意します。そして作ったあとは、更新する曜日と担当を固定して、予定と実績を並べた状態を保つこと。ここが続くかどうかで、工程表が使える道具になるかが決まります。
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