足場の点検のやり方|点検者の指名義務と記録項目
目次
足場の点検は、2023年10月の労働安全衛生規則の改正で運用が変わりました。点検者をあらかじめ指名することと、記録に点検者の氏名を記載することが義務づけられています。古い様式のままだと氏名欄がなく、記録として不備になることがあります。
この記事では、足場の点検のやり方を、2種類の点検の違い、点検者の指名、見る場所、記録項目の順に整理します。自社の工事に何が適用されるかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
結論:足場の点検は2種類、片方は点検者の指名が必要
足場の点検は、労働安全衛生規則第567条に定められており、大きく2つに分かれます。
| 点検 | タイミング | 点検者の指名 | 記録の保存 |
|---|---|---|---|
| その日の作業開始前の点検 | 足場での作業を始める前 | 指名は求められていない | 法令上の保存義務なし |
| 組立て・一部解体・変更後、悪天候後などの点検 | 該当する事由が生じたとき | あらかじめ指名した者が行う | 足場を使用する作業を行う期間+3年 |
ポイントはここです。毎日やる点検と、事由が生じたときの点検は別物です。記録の扱いも違うため、混同すると保存義務を満たせません。
足場の点検その1:その日の作業開始前の点検
いつ行うか
足場を使った作業を始める前に、その日ごとに点検します。作業を行う事業者が実施します。
見る場所
主に、床材の状態と手すり等の状態を確認します。実務では次のような項目を見ます。
- 作業床の損傷、隙間、材料の仮置き
- 床材の固定(ずれ、脱落)
- 手すり、中桟、幅木の有無と固定
- 昇降設備の状態
- 通路の確保
朝礼後、作業に入る直前に行うのが定着しやすいタイミングです。
記録
その日の作業開始前の点検については、法令上の記録保存義務は定められていません。ただし、実施した記録を残しておくと、災害時に点検を行っていたことを示せます。社内基準で残している現場が多くあります。
足場の点検その2:組立て・変更後、悪天候後の点検
点検が必要になる事由
次のような事由が生じたときに点検が必要になります。
- 足場の組立て、一部解体、変更の後
- 強風、大雨、大雪などの悪天候の後
- 中震以上の地震の後
悪天候の後の点検は忘れやすい項目です。台風や大雨の翌朝は、通常の作業開始前点検に加えてこの点検が必要になります。
点検者をあらかじめ指名する
2023年10月1日施行の改正により、この点検は事業者があらかじめ指名した者に行わせることが義務づけられました。
指名する者として望ましいとされている例には、次のような人が挙げられています。
- 足場の組立て等作業主任者であって、能力向上教育を受講した者
- 労働安全コンサルタント
- 仮設安全監理者資格取得講習を受けた者
- 施工管理者等のための足場点検実務研修を受けた者
「あらかじめ」という点が重要です。事由が生じてから誰にやらせるかを決めるのではなく、事前に指名しておきます。指名した事実を書面に残しておくと確実です。
記録に点検者の氏名を記載する
同じ改正により、点検の記録に点検者の氏名を記載することが義務づけられました。従来の様式には氏名欄がないことがあるため、確認が必要です。
記録の保存期間
この点検の記録は、足場を使用する作業を行う期間中は保存し、その作業が終わってからさらに3年間保存します。他の点検記録と起算が違うため、廃棄のときに注意が必要です。
足場の点検で見る場所【詳しく】
上から順に見る
足場の点検は、順路を決めて上から下へ見ると漏れが減ります。
- 最上層:手すり、中桟、幅木、作業床の隙間、開口部
- 各層の作業床:損傷、ずれ、材料の仮置き、通路幅
- 建地・布・腕木:緩み、変形、亀裂、緊結金具の状態
- 壁つなぎ:本数、間隔、固定状態、外れの有無
- 昇降設備:階段、はしごの固定、手すり
- base部分:base金具の沈下、敷板の状態、地盤
悪天候後に特に見る場所
- 壁つなぎ:強風で外れやすい
- シート・ネット:破れ、外れ、たわみ
- base部分:大雨で地盤が緩んで沈下していないか
- 仮置き材:飛散や移動がないか
シートが破れていると、そこに風が集中して足場全体に力がかかります。破れは早めに補修します。
足場の点検記録に必要な項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点検年月日 | 実施した日 |
| 点検した足場の場所 | 建物のどの面、どの範囲か |
| 点検の事由 | 組立て後/変更後/悪天候後/地震後 |
| 点検結果 | 各項目の判定 |
| 補修した箇所 | 異常があった場合の是正内容 |
| 点検者の氏名 | 2023年10月から必須 |
「補修した箇所」の欄を空欄にしないようにします。異常がなければ「なし」と書きます。空欄だと、確認したのか忘れたのかが分かりません。
足場の点検者を指名する手続き
2023年10月1日施行の改正で、組立て・変更後や悪天候後の足場の点検は、事業者があらかじめ指名した者に行わせることになりました。「あらかじめ」なので、事由が生じてから決めるのでは要件を満たしません。
着工前にやること
- 誰を点検者として指名するかを決める
- 指名した事実を書面に残す(指名書、または施工計画書に明記)
- 本人に指名したことを伝え、点検の範囲と記録の方法を共有する
- 点検表に点検者の氏名欄があるかを確認する
- 不在時に誰が代わるかを決めておく
5が抜けやすいところです。指名した1名が休んだ日に悪天候が来ると、点検できる人がいない状態になります。複数名を指名しておくか、代理を決めておきます。
誰を指名するか
法令上、特定の資格の保有が一律に義務づけられているわけではありませんが、望ましいとされている例が示されています。
- 足場の組立て等作業主任者であって、能力向上教育を受講した者
- 労働安全コンサルタント
- 仮設安全監理者資格取得講習を受けた者
- 施工管理者等のための足場点検実務研修を受けた者
自社の状況に応じて、これらに該当する人を優先して指名するのが実務的です。該当者がいない場合の扱いについては、所轄の労働基準監督署に確認してください。
元請と足場業者のどちらが指名するか
点検の義務は、足場を使用して作業を行わせる事業者にあります。元請と足場の設置業者、それぞれの立場で誰が点検するかを着工前に整理しておく必要があります。
実務では、組立て直後の点検は設置業者、その後の悪天候後などの点検は元請が指名した者、という分担にしている現場があります。分担を決めたら書面に残します。
記録の様式を確認する
古い様式には点検者の氏名欄がありません。着工前に、使う様式に次の欄がそろっているかを確認します。
- 点検年月日
- 点検した足場の場所
- 点検の事由(組立て後/変更後/悪天候後/地震後)
- 点検結果
- 補修した箇所
- 点検者の氏名
足場の点検でよくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 古い様式で氏名欄がない | 記録として不備になる | 様式を改正に対応したものに更新する |
| 事由が生じてから点検者を決める | 「あらかじめ指名」を満たさない | 着工前に指名して書面に残す |
| 悪天候後の点検を飛ばす | 外れた壁つなぎを見逃す | 天候をきっかけにした手順を決める |
| 2種類の点検を混同する | 保存義務を満たせない | ファイルを分けて綴じる |
| 補修欄を空欄にする | 確認したか分からない | 「なし」と書く |
| 足場業者任せにする | 使用する側の確認が抜ける | 使用前に自社でも確認する |
よくある質問
足場の点検者に資格は必要ですか
改正で求められているのは「あらかじめ指名すること」で、特定の資格の保有が一律に義務づけられているわけではありません。ただし、足場の組立て等作業主任者で能力向上教育を受講した者などが望ましいとされています。詳細は厚生労働省の資料と所轄の労働基準監督署で確認してください。
一側足場についても点検は必要ですか
足場の種類にかかわらず、規定の対象となる足場については点検が必要です。2023年の改正では一側足場に関する規定も見直されています。自社が使用する足場が対象になるかは、規則の条文で確認してください。
悪天候の基準はどのくらいですか
規則では「強風、大雨、大雪等の悪天候」とされています。具体的な数値基準については、通達や社内基準で運用されていることが多くあります。判断に迷う場合は点検するという運用にしておくほうが安全側です。
点検記録は誰が保管しますか
足場を使用する事業者が保管します。元請が現場ファイルで一元管理し、工事完了後は本社で保存年数まで保管する運用が一般的です。保存期間の起算が他の記録と違うため、廃棄可能年月を明記しておくと確実です。
足場の点検は毎日と事由発生時の両方が必要ですか
はい。その日の作業開始前の点検と、組立て・変更後や悪天候後などの点検は別のものです。記録の扱いも違うため、点検表とファイルを分けておくと管理しやすくなります。
点検者に指名された人が現場にいない日はどうしますか
代理を決めておく必要があります。1名だけを指名していると、その人が休んだ日に悪天候が来たときに点検できません。着工時に複数名を指名しておくか、代理の取り決めを書面に残しておきます。
足場業者が点検した記録をもらえば十分ですか
組立て直後の点検を足場業者が行った記録は受け取って保管します。ただし、その後の悪天候後などの点検は、足場を使用して作業を行わせる事業者の義務として整理が必要です。分担を着工前に決めて書面に残してください。
記録の保存期間の起算が分かりにくいです
足場の点検記録は、足場を使用する作業を行う期間中は保存し、その作業が終わってからさらに3年です。他の点検記録(3年)と起算が違うため、ファイルを分けて背表紙に廃棄可能年月を書いておくと迷いません。
点検で不具合が見つかったらどうしますか
是正するまでその足場での作業を行わせないのが原則です。補修した箇所は記録に残し、再確認して問題がないことを確認してから使用を再開します。「後で直す」で作業を続ける判断はしないほうが安全です。
一側足場も同じ扱いですか
2023年の改正では、一側足場に関する規定も見直されています。自社が使用する足場が規定の対象になるかは、条文で確認してください。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認することをおすすめします。
点検の記録は現場に置いておく必要がありますか
足場を使用している期間中は、確認を求められたときに提示できる状態にしておく必要があります。現場事務所に置き、工事完了後は本社で保存期間まで保管する運用が一般的です。
まとめ
足場の点検は2種類あります。その日の作業開始前の点検と、組立て・変更後や悪天候後の点検です。後者は、2023年10月1日施行の改正により、事業者があらかじめ指名した者が行い、記録に点検者の氏名を記載することが義務づけられました。
記録の保存期間は、足場を使用する作業を行う期間に加えて3年間です。他の点検記録と起算が違うため、ファイルを分けて廃棄可能年月を書いておくと管理しやすくなります。まずは、自社の点検表に点検者の氏名欄があるかを確認してみてください。